温度周波数変換装置の経緯


.正弦波を使う表現は可能か

 2006年の6月の事だった。友人のお宅に仲間で集まり、自作オーディオの視聴会行った時の話。誰かは覚えていないのだが、古い低周波発信器を持ってきた人がい た。たぶん1960年代前半の装置らしい。別に最近の発信器を持ってきた人も居た ので面白半分に聞き比べてみる事になった。どちらも測定器であるから新旧の差はあっても耳で聞き取れるほどの違いは出ないだろうと考えた。しかし、予想に反して、音が違ったのである。
 この微妙な差は不思議である。しかも、音の良し悪しがある様だ。私は考え込むと同時に正弦波は表現方法として使えるかも知れない と考えた。ここから、表現手段になるか試行錯誤が始まった。

.正弦波の音色を変える・・・なんか変だ

 最初に浮んだのは正弦波の音色を変えると言うことだった。しかし、それって変であ ることはすぐに気がついた。音色が無いから正弦波なのだ。音色を付けると正弦波で なくなってしまう。波形に細工する手法はやらないことにした。むしろ、正弦波はよ り正確に完全に色を消す方が望ましいと考えた。(最も単純な波形なのだから、それを貫く)

インタラクティブにするか否か

 正弦波をそのまま発生させても単に五月蝿いだけで、その行為は奇をてらって面白いが、その物には何の意味も無い。そこで、少し考えた。例えば、傍に居る人間の行動が回路に影響を及ぼし、周波数が変わっていく装置。ウィーンブリッジのCに並列に 銅版を2枚付けると、ボディエフェクトで容易に周波数を変える装置が作れそうだ。そうそう、2台準備してビート音を発生させるともっと複雑な変化が発生する。面白 いかもしれない。装置の前で体を動かすと音楽を演奏できるかも・・・・
・・・・・
 これは駄目だ。これってテルミンそのものじゃねーか。・・・・同時に楽器は決して作らない事にした。いまさら楽器作ってどうする。それに演奏したからって何になる。
こんな、経緯でインタラクティブな仕掛けは否定された。

何を検出させるか

 何らかの変化を付けるとすると、周波数を変化させるしか方法が無いことはわかった。 それでは何を検出し周波数を変えるか?
当初、全てアナログで作ることを考えていた。その場合最も可能性が高いのは空間の 静電容量の変化である。幾つか回路を考え、実際の製作を始めようとした時、もう一 つの問題があることに気がついた。作品は実際に何処かに設置し動かさなくてはなら ない。アナログで作った時、現場でも同じように安定して動作するか。また、変更を加える際に現場で可能かと言うことだった。
 しばし、考えた後ウィーンブリッジは否定された。(トラぶった時にリカバできる自信が無い)そして、代わりに浮んだのがデジタルでやる事だった。結局作りやすさや、現場での調整の容易さから、DDS+マイコンという組み合わせでソフトウエア制御となった。マイコンのA/D入力から外部の情報を電圧で入れるようにすれば使用可能なセンサも増える。そして、最も扱いの良いセンサと言うことで温度センサで試すこととなった。ここから「温度を測定」が始まっている。

実際に動作させると

 2006年に蔵行った「人生いろいろ下心」に製作した変換装置を出展し実際に起動させてみた。自宅での実験同様ビート音が発生した。試みは成功したのだ。最初、音量調整が上手くできず聞いているのが辛い状態であったが、レベル調整を一部変更し、調整をしやすくした。しかし、その時は、バンドが居たり、パーティだったり、可聴限界付近の音はほとんど聞く事ができなかった。教訓としては強制的に環境を作らないと成立しないことだった。そして、改良を加え、現在に至っている。

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