6Y6強NFアンプ

EL34に改造


取っ掛かり

6Y6という球は私にとっては期待できそうなプレート形状をしていました。15年ほど前に弟が作った25L6アンプのすごい音を出していた記憶があります。その25L6とよく似たプレート形状をしています。その時すでに実験されていた宇多さんから注意は聞いていたので、教えていただいた通りの電圧配分を使用することにしました。

6Y6アンプ外観

6Y6の外観です。まだトランスカバーを外した写真です。

回路デザインのポイント

実験のポイントは、「NFの弊害は本当か?」です。最近NFが悪者にされています。私もNFが問題と思い完全無帰還のDACまで作りました。しかし、最近の実験結果を総合すると、悪いのはNFでないのかも知れないと思うようになりました。NFを増幅素子に掛けることは電圧出力素子を作る事にほかなりません。たとえ、デバイスが電流源であってもNFループを含む回路はマクロ的に見ると電圧源と見る事ができます。3極管は電圧源ですし、超3も多量のNFを使用してます。PG帰還を掛けても通常の無帰還アンプと同じような音が得られる事は今までの実験で明らかになりました。シングルアンプの音の秘密が電源にあったとすると、トランスさえNFループに入れなければNFの使用はOKということになります。仕上げのテストとして6Y6アンプで多量のNFを使用することにしました。

どうせNFを掛けるならドラスティックに、と思い差動入力を採用する事にしました。本当なら5極管を使用したかったのですが、球の節約から12AX7を使用する事にしました。簡単に入手可能で2本入り、という条件を満たしているのは12AX7だけです。又、プレート抵抗は1Mを使用しました。差動入力の場合、ゲイン大きい事が最優先されます。多少歪もうが問題ではありません。どうせNFで歪みを取るわけですから、多量にNFを掛けられるようゲインが最優先されます。

出力トランス

出力トランスには東栄トランスのT−850 12Kを3個、一次並列、2次直列で使用すると決めました。このトランスは構内放送などのマッチング用として売られている物です。小型で1個850円と非常にローコストです。オーディオの常識からすればよい音が出るはずはないのですが、SDを使用した回路ではこの手の小型トランスの方が聴感上、ぬけもよく、いい音がします。理由は別に検討するとして...

12Kのトランスも並列−直列接続とすると1次のインピーダンスは1/9となり1.5K程になります。又、小型とは言え一個50mA程は流せますから3個で150mAぐらいは流せる事となります。コアボリュームも3個で20W程になると思われます。もちろん3個使用ですから分割巻きという事になります。これで立派な低インピーダンストランスが出来上がります。片チャンネル2550円と非常にローコストです。

回路解説

差動入力と決めましたから入力段の回路は必然的に決まってしまいます。後はファイナルとドライバを決めれば回路は決まります。NFは6Y6のプレートから掛けます。差動入力のマイナス入力部分でコンデンサでDCカットする様にし、NF回路は普通のOP−Ampの回路と同じようにします。今回は手持ちの抵抗の関係から1Kと47Kを使用しました。よって、たぶん回路の増幅率は47倍になるでしょう。各部分の結合は直結とすればかっこいいのですが細かい設計並びに調整を要するためコンデンサでDCカットします。コンデンサの容量を十分大きくとれば直結と音的には変わらないはずです。コンデンサには、スペースファクタの関係から電解を使用する事にしました。電解コンデンサは放電が遅いといわれる片がいらっしゃいますが、実際に特性を計りますと最近の物はどれでも500KHzぐらいまではコンデンサとして動作します。ですから1MHzぐらいまで聞こえる方は1000pF程度のセラミックでも並列に入れておけば十分なはずです。私は電解だけとしました。

6Y6のドライブを12AX7差動部だけとするのは少し不安だったので、12AU7のカソード・フォロアをつけました。後は、トランスを付けて、基本回路は完成しました。

6Y6のバイアス並びに電圧の設定は規格表の動作例をそのまま使用しました。ここでポイントなったのはスクリーングリッドの電圧でした。普通のオーディオ管ですとそのままB+につないで知らん振りするのですが、宇多さんからの情報でスクリーン電圧をちゃんと守らないと変な音になると聞いていましたので。プレートより20Vは確実に低くなるように電源回路を工夫しました。普通なら抵抗でドロップさせるのが一般てきですが、私は電源ユニットの中に20Vの電源を追加しました。6Y6用の130V電源の上に積み上げて130Vをスクリーン+20Vをプレート用としました。本当は5極管を使用する場合はスクリーン電圧をプレート電圧より低くしなければなりません。宇多さんがメールの中で書いていたのですが、6Y6等が人気がなかったのはスクリーン電圧の設定をきちんと行わず6V6等と差し替えてテストしたからではないかと言っていました。その場合6Y6はひどい音を出すそうです。私の場合は事前に情報があったので、素直に従いました。

ストッピング・ダイオードにはファーストリカバリを使用しました。このアンプはNFを大量に使用するため、リニアライザを付ける必要はありません。そこで実験も兼ねて、より電力ロスの少ないファーストリカバリを使用しました。今までリニアライザとストッピング・ダイオードは整流管を使用し兼用となっていましたが、今回は理想的なストッピング・ダイオードにより近づける事で動作確認も実験の予定になっています。

6Y6回路図

制作・ヒヤリング

電源は外付とするためケースは小型のもので十分です。トランスを方チャンネル3個使用しますが、スペースの関係から縦に積み上げ半田で繋ぎました。電源の引き込みコネクタは8pinと11pinを2つ使用しました。8pin側はヒーター専用にし、11pin側をB電圧などに使用しました。2つに分けたのは実験用標準電源を近々制作する予定で、ヒーター電圧の組み合わせが容易に変えられるように配慮しました。

グランドはケース上面に銅箔シールを貼り、べたアースにしました。部品を最短でグランドに半田し出来上がりです。

ヒヤリングの結果は上々で非常にパワフルです。ストッピング・ダイオードはうまく行ったようで無帰還アンプのような抜けの良い音がします。低域も良く出ます。床を経由して低域が伝わるのではなく、直接音圧として体感する事ができます。それほど大きな音でなくても、隣の部屋の食器棚のガラスがビリビリ鳴き出したりします。実験は成功のようです。念の為、リサージュを取ると807アンプで観察されたような位相の進みが観察されました。

6Y6アンプ配線

べたアースにもだいぶ慣れました


急遽EL34に改造

el34snf.jpg
忙しかったのでちょっとズルをしました

 手作りアンプの会のコンサート用にEL34用に改造しました。同時に差動アンプ部に定電流ダイオードを入れて改善しました。音の感じはパワーが出る分とgmが高い為、ずっと良くなった感じです。只、シャーシが小型の為かなり熱くなります。冬場は良いですが、夏はちょっとかんべんです。
タムさんのページへ 手作りアンプのページへ