外観はそのままですが中身は超3です
このアンプはアメリカの友人宅を回る予定です。リポートをお願いしますので、届き次第掲載します。
以前から気になっていました。でも今更キットなんてと思っていました。ところが、アンプ・ツアー計画が持ち上がりました。今まで作ったのアンプのどれかを送ろうと思ったのですが、電源が共通なので送ると我が家の音が出なくなります。そんな中、高橋さんがコンサートにTU−870の改造機を出品されました。非常にコンパクトで、見た目も良く、丈夫。これを使わない手はありません。私は取る物もとりあえず早速1セット購入しました。キットとしての完成度は非常に高く、マニュアルは非常に良くできています。価格を考えるとこれ以上のコストパフォーマンスを持つ製品は他にないでしょう。私は、キットの設計者には申し訳ないと思いましたが、最初から改造を施す事にしました。回路基板をそのまま使用して、最低限の改造で超3化しました。
最初に回路を決めました。回路は超3Vor.1を使用しました。この回路が最も簡単で、音質的にも優れているとの判断からです。以下に回路を示します。
著作権の関係から、パターンそのものをお見せする事はしません。同様にオリジナルの回路も掲載しません。私がオリジナルの回路パターンをそのまま使用したのは、5極部のカソード回り、ヒーター配線、GND配線、電源回路の一部、ボリューム回りです。結局3極部回りはすべてカットしました。
パターンカットを成功させるためには、オリジナルの配線を良く検討しパターンを良く把握する事が必要です。その上で流用するパターンを決め、どこをどうしたら改造後の回路になるか、きちんと確認して下さい。もし、面倒なら全部カットして、空中配線しても良いでしょう。何度か確認し、OKであればパターンをカットします。カッターで切れ目を入れて不要なパターンをはがし取ります。パターンのはがし取りをきちんとしないと、高圧を使う関係から危険です。最低でも1cm以上パターンをはがし取って下さい。
SDは半田面に付けました。回路を補う為にジャンパーを飛ばします。
写真は半田面です。分かり難いと思いますが、SDを半田面に取り付けました。5mm以内の高さで仕上れば部品の取り付けが可能です。パターンは比較的大きく改造は然程問題ありませんでした。
次に、FCZ研究所のIC用基板をカットした上に、電流変換部を作ります。これを両面テープで部品面の開いた部分に取り付けます。なるべくトラブルを避けるためにボリュームの近くに置くようにして下さい。オリジナルの回路のB+に入っているコンデンサの容量は小さいので、シャーシ内の空いた部分を利用してコンデンサを追加します。写真の白い円筒が追加されたコンデンサです。1800uF200Vを2個直列で使用しています。この時注意する事は、上に乗ったコンデンサの外皮部分に高圧がかかる事です。そのままでシャーシに入れるのは危険ですのでやめて下さい。私は梱包用のスポンジで包んで、その上から透明な梱包用のテープでぐるぐる巻きにしました。蓋をした時にガタが無い様にしました。ここでトラブってはせっかくの改造がだいなしです。絶縁、等は慎重に過剰にして下さい。
部品面と実装時の様子。白い円筒は追加した電源コンデンサ。
調整は通常の超3の場合と同じです。但し、電源電圧が200V程度までしかでないため、NF部のカソード抵抗を小さ目に設定しましょう。私は最初6.8Kを使用しましたが、片ch音が出ませんでした。最終的には4.7Kで落ち着きました。出力部の電流は30mAに合せました。
無事、鳴り出すと音はなかなかの物です。力強く粘りのある音がします。感度も高くボリュームが12時の点では触ると少しノイズを拾います。ただ、発振はしませんでした。
当初、TU−870をベースにして、超3を手軽に楽しめると考えました。ところが、簡単にするためにプリント基板をそのまま流用する事としたのですが、これは簡単ではありませんでした。シャーシをそのまま使用して、空中配線した方が楽です。誰か、このキット専用の超3基板でも起こせば初心者にも奨める事ができます。腕に自信の無い方はやめときましょう。
その後、TU−870はアメリカの友人に貸し出し全米を行脚させるために、120Vによる調整とエージングを行っています。今の所、トラブルは発生していません。多少熱を持ちますが、この程度なら大丈夫でしょう。
キット屋さんが発売されているキットは、マニュアルに示された以外の改造を行うと保証がされなくなります。もし、キットを買われてこの様な無謀な改造をする場合は、仕上られない時誰も助けてくれない事を忘れない様に。
1999/05/31 田村