中型電源外観
電源のトラブルは重大な事故を招く事が考えられます。たとえば、火事とか感電死とかぞっとする事故も含みます。もし、この様な電源を使用する場合は、十分な安全に対する配慮を必要とします。たとえばアンプへのケーブルの耐圧、ケーブルが経年変化でトラブルの元とならないか等十分な検討をしてください。そうでなくても真空管アンプは危険です。運転する際には必ず人が見ているとか、基本的な安全への行動をしてください。
制作したユニバーサル電源は3機あります。一つは比較的小出力のアンプのための電源です。6BM8・6EW7等方チャンネル2W程度ののシングルアンプに適した容量を持っています。もう一つの電源はもっと大型のアンプの為の電源です。大型用の電源はヒーター電源回路に少し工夫をしています。水平出力管を今後多用知ようとした場合ヒーター電圧の問題が発生します。大半の真空管は6.3Vというヒーター電圧ですが、後期のテレビ用の真空管を使用しようとした場合17Vとか21V等中途半端な電圧が必要になります。直熱管を使用しようとした場合も幾つかのバリエーションが必要になります。このヒーターの問題を解決するために外部ヒーター電源端子を設けました。又、シャーシのサイズの関係でB+とヒーターは別の箱に収納する事としました。最後に小容量のちょうどラジオなどの製作に適した電源が在ります。
何種類ものB+電圧を得るために複数のの電圧の異なるフローティング電源を設け、アンプシャーシー内で組み合わせ、必要な電圧を得ます。例えば250Vの電源と25Vの電源を準備すれば275Vの電圧を作る事ができます。一般的な、制作記事ではこの様な接続例はあまり見かけません。原理的に何ら問題はありません。最初ちょっと気持ち悪いと思いますがトランスの絶縁は2000V(実力値)ありますし、使用するコネクタ等の耐圧をちょっと気を付けて下さい。
?ここで問題 電圧の加算はできます。さて、減算は本当に可能なのでしょうか? 煙吹くかも
雑誌等の制作記事ではアンプと電源を別に制作する例はほとんどありません。そのために電源トランスを一つで済ましている回路が多いようです。一般の真空管オーディオ用トランスは目的の球を限定して設計されています。たとえば2A3用として2.5Vヒーター巻き線が用意されているとかします。しかしながら、少し毛色変った球を使おうとすると、電圧が高かったり低かったりぴったりと言うわけにはなかなか行きません。私の電源では以下のような電圧を出力できる仕様としました。よほど変わった球を使用しない限り必要な電圧を得る事ができるはずです。
電圧の組み合わせ例
電圧 |
組み合わせ |
ターゲットとなりうる真空管 |
110V |
135V+25V |
25EH5 6AN5 |
160V |
135V+25V |
6Y6 25L6 |
260V |
235V+25V |
807 小型水平出力管 |
285V |
235V+25V+25V |
2A3 中型水平出力管 |
370V |
235V+135V |
300B 大型水平出力管 |
420V |
235V+135V+25V+25V |
送信管 大型水平出力管 |
トランスはACの電圧調整用のトランスを使用します。上記の組み合わせ例で135Vは100V−100Vの絶縁トランス、235Vは240V−100V(ヨーロッパ用)ステップダウントランスを使用している関係でこの様な電圧になります。この手のトランスは容量の割にコストが安くいくつか並べても、さほど懐を寂しくせずにすみます。更に安全に対する対処も十分で、一次と二次の巻き線の間には大抵静電シールドが入っています。静電シールドをきちんとアースしておけば事故につながる事は少ないと思われます。
電源の積み重ねで電圧を作った意外なメリットですが、水平出力管など近代5極管、ビーム管の中にはプレート電圧は高いのにスクリーン電圧が意外に低いものが数多くあります。その様な球にプレートと同程度のスクリーン電圧を印加すると破損すらしないものの動作に問題が在るようで、ひどい音がする事が少なくありません。オーディオ管でスクリーン電圧を作るのに抵抗で電圧を下げる方法が良く使われますが、スクリーンの電流の変化は激しくあまり良い方法とは言えないと思われます。又、100V近く電圧を下げなければならないケースなどでは抵抗の放熱などもばかになりません。たとえば組み合わせ例の160Vですが135Vと25Vを加算しています。その135Vのをスクリーン電圧とすればちょうど良い事になります。別電源ではないにしろ抵抗を使用したドロッパよりずっと安定な電圧を得る事ができます。(十分に容量の大きな電源を使用した場合)
以下に電源の仕様を上げます。
中容量電源仕様 |
||
項目 |
値 |
備考 |
B電源容量 |
200mA |
中型の真空管を使用してステレオアンプが作れる程度 |
B電源電圧 |
260V |
BMの会 特注トランスを使用 |
ヒーター電流 |
3A×2 |
6BM8が4本使用できる程度 |
ヒーター電圧 |
6.3V+10%×2 |
ハム対策として整流しDCにする |
電源電圧 |
AC100V |
|
シャーシ |
1 |
1つのシャーシにすべて内蔵 |
大容量電源仕様 |
||
項目 |
値 |
備考 |
B電源容量 |
500mA |
大型の真空管を使用しても大丈夫な容量 |
B電源電圧 |
235V |
電圧調整用トランスを使用する事が前提 |
ヒーター電流 |
5A×2 |
5Aは出力管用 |
ヒーター電圧 |
6.3V+10%×4 |
ハム対策として整流しDCにする |
電源電圧 |
AC100V |
|
ゲスト電圧端子 |
2本 |
追加ヒータ電圧として2本のライン持つ |
ゲストヒーター |
2系統 |
5A側のヒーター2本を外部からの電圧供給に切替え可 |
シャーシ |
2 |
Bとヒーターは別シャーシを使用 |
次に大切な事ですが出力コネクタのピン接続を決める必要があります。ユニバーサル電源の最大の効用はアンプ制作事における電源制作の負荷から開放される事にあります。よって、アンプと接続するコネクタの種類とピンの接続をきちんと決めておく必要があります。以後同様のコネクタの配列でアンプを製作すれば、電源を以後作る必要は無くなります。又、アンプだけの制作ですと簡単、短時間、ローコストでアンプの制作が可能になります。
具体的な設計例です。回路は極力簡単にします。私は、安定化電源などは避け、単純にブリッジ整流とπ型のリップルフィルタとしました。又、コンデンサ容量を極力大きく取る事で電池に近い動作を得る設定としました。尚、低電圧安定化していませんので、真空管の使用電流によって電圧が若干変ります。予って、電圧の表記は開くまでも目安ですので、ぴったり同じ電圧にはこだわる必要はありません。現在使用中のユニバーサル電源は3種類で小用量のものは回路図を省略します。内容としてはB+用150V、25V、25V各200mA、ヒーター用6.3V2Aと言う内容です。以下に回路図を示します。
回路図を見て「何だこれ」と思われた方も多いと思います。電源に関しても簡単に制作できる事を主眼に作りました。特にチョークが小さいと思いますが、コンデンサが巨大なため十分な効果が得られます。
部品配置の様子
裏面の配線
何度か書いたのですが、電源のトラブルは重大な事故の原因となる事が考えられます。耐圧・放熱その他安全に関する十分な検討を行ってください。
大型のユニバーサル電源に関して電源投入シーケンスに注意する必要があります。箱をB+とヒーターに分けた関係でヒーターがONになる前にB+が印加されると使用する真空管によっては破損する危険があります。事故の危険を確実に回避するためにヒーター電源のスイッチを全体のマスタースイッチとしています。並びに、B+の電源ケーブルを特別仕様にして、ヒーター電源からしかACの供給ができないようにしておきます。こうする事でミスによるアンプの破損を回避できます。但し、安価なコネクターの種類があまり無いため、ヒーター電源ではゲストヒーター端子と出力コネクターがオスメスの違いが在るにしろ同じ物になってしまいました。これから制作される方は安全性に関して十分注意を払ってください。
尚、大型用電源は現在改装工事中です。最初ベニヤ版の上に木ネジで部品を止めて使っていました。それでは、あんまりなので鈴蘭堂のボンネットシャーシに組み替えを行っています。完成しましたら写真を載せますのでお楽しみに。
1999/1
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