ボリュームコントロールと600Ω電送ラインドライブ用アンプです。5年ほど前に計画を開始以来制作を続けている自宅のシステムの送り出し用のラインアンプです。増幅段は5692(6SN7GTB)片ユニット/chではじめは球1本でした。構成図を以下に上げます。
トランスの構成は現在も変っていません。すべてトランス結合というわけですが非常にワイドレンジです。(これを聞く限りトランスを使用してナローになるとは到底思えない)最初はこの構成で十分満足していましたが3年ほど前スピーカーをGoodmanから現在の平面スピーカーに全面入れ替えを行ったのですが最初に困ったのがラインアンプでした。全く鳴らなくなってしまったのです。接続しないほうが良いのです。当時このスピーカーをまともに鳴らせたのが超3結6BM8だけでした。それまで愛用していた6B4G等ラインアンプを含めて全滅でした。しかし、このラインアンプだけは何とか救おうと試行錯誤が始まりました。(めちゃくちゃ金がかかった為)
最初に立てたリアリティの要素の一つを解き明かす事も含めて実験は始まりました。当時ラジオ技術の藤井秀夫さんの2乗特性歪みの改善の記事を参考に終端トランス側に2極管抵抗を入れ打ち消す事を実験しました。ところが2極管のバイアスが超3結6BM8の入力FETのバイアスを狂わせてしまいひどい状態となりました。(モーターボーディング・ハム・もろもろ)今思えばコンデンサのACカットで解決したと思いますが焦っていたので気づきませんでした。そこでいろいろ考えた末一つの方式を思い付きました。
真空管の(他のデバイスも同様)等価回路をいくら眺めてもそのデバイスが歪みを発生するとは思えません。物の本によると実際には理想デバイス(等価回路)に直列に2極管が接続されていると書いてあります。この2極管が2乗特性を持っていてそれが歪みの原因になるとあります。スパイスを使用して電流源の上にダイオードを付けてシュミレーションを行うと確かに入力した正弦波の形が崩れます。
そこで気づいたのですが100Hzでも100KHzでも崩れた後の波形は同じ形となります。特に0クロスのずれを考えると100Hzと100KHzでは実に1000倍も違う事になります。そこで仮説を立てました。
改造するにも我が家のラインアンプには幾つか問題がありました。出力に10K−600Ωのトランスを使用しているためNF等を使用して出力管のインピーダンスが下がると、トランス以後のインピーダンスが狂いアッテネーター等が使用不能になる。そこで無帰還による2乗特性の撲滅に取り組みました。どこかで逆特性を発生させ打ち消せば良いのですが2段アンプにするのも芸が無い。いろいろ考えたあげく電源と出力トランスの間に2極管を入れる事を思い付きました。後で「BMの会」の宇多さんに聞いて分かったのですが、この2極管をリニアライザと言い以前高周波のリニアアンプで使用されていた事を知りました。
結果は驚くほどの改善を示しました。ラインアンプを入れると全く鳴らなくなった平面スピーカーがちゃんと鳴るようになったのです。
リニアライザは次に807シングルアンプに全面採用しました。前段および出力段も理想的であるはずの同じデバイスを使用して成功しました。ラインアンプも807に習って同じデバイスを採用しようとしたのですが、5692は高価な為同じプレス型のプレートと思われる6SN7GTBをリニアライザに使用しより一層の改善を図りました。又、逆特性を正確に発生させるため電源のコンデンサの容量を200uFから3000uFに増強しました。その他コンデンサ類を大容量化し可聴帯域から電源の時定数による位相の回りを極力排除しました。
現在もこの状態で鳴らしています。既に真空管らしい音はしません。今思えばこんなものOP−AMPで十分だったとちょっと後悔しています。でも、5年も少しずつ改良してきたため愛着のある大切なアンプです。