6AN5 8パラ 強NFアンプ

チリも積もれば...


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穴あけが大変でした。


トランスをどうするか、回路はどうするか

6AN5は1本で30mAのバイアスが必要です。借りに押えで25mA程度のバイアスを使用したとして、8本で200mAとなります。これでは使えるトランスがありません。そこで考えたのがT850−600を使用する事です。このトランスは1次600オーム、2次8オームです。予って、1本あたり70mA程度は大丈夫なようです。これを3個並列にして解決する事としました。ついでに2次側を直列につないで1次のインピーダンスを極端に低くしてみる事にしました。プレートからたっぷりNFをかければ駆動できない事はないはずです。すると回路は強NFとする事としました。超3でも行けると思ったのですが、調整が楽な為強NFとしました。更に、バイアスの調整が楽な固定バイアスを使用しました。
この様なパラレルの接続で恐いのは、回路長が長くなる事で発生する発振と、個々の球のバランスが崩れる事で発生するどこか一つの球への電流の集中です。
発振止めとして、各々の球のG1とPに100オームの抵抗を入れる事としました。更に、信号の分配を行うバスとの間にフェライトビーズを入れる事としました。後は最短の配線をする事と出力バスラインと入力バスラインを離す事で発振対策としました。それ以上の発振対策に関しては、組み立て後実際に発振が起こったら対処する事としました。
球のバランスに関してはセルフバイアスではあまり問題にならない事から、セルフバイアスと固定バイアスを組み合わせた、セミプリフィックスドバイアスとしました。それぞれの球のカソード端子に100Ωを2本入れそれをセルフ分としました。ちょうどユニバーサル電源に25V端子が出ている事からこれを固定バイアス用に使用しました。
以下に回路図を示します。

6AN5 8パラ 回路図
                   6AN5 8パラ 強NFアンプ 回路図

ハムが出た

最も製作で苦労したのは穴あけでした。何しろ22個も穴を空けなれればなりません。3時間ほどかけて穴あけをしました。もうこりごりです。穴あけ後、いつものようにベタアース用の銅箔シートを張りました。ここで問題が発生しました。ユニバーサルアンプの電源トランスは500mAです。多少余裕があるとは言えぎりぎりの電源となってしまいます。もし、ハムが出たらどうしよう。アンプのシャーシにはこれ以上コンデンサを付ける余裕はありません。仕方なく外部にコンデンサを追加できるような端子を設けておく事としました。これが後で役にたちました。
配線終了後、全ての球を刺してヒーターを点けてみました。ヒーターは問題なく点灯。続いて、恐る恐るB+を入れました。ブンと言う音と共にアンプは動作を開始しました。OPTのDCRがちょうど10Ωだったのでトランスの1次側の電圧で電流を測定しました。バイアス調整ボリュームを回して2V発生する場所で止めました。さて、ここで問題発生です。いつになくブーンと盛大にハムが出ています。やはり電源が間に合わなかったようです。ここで悩んでも仕方ないので音楽信号を入れて音を聞いてみる事にしました。低インピーダンス化を図る為にNFを大量にかけた為、かなりゲインが低いようです。ボリュームを1時の辺りまで回してようやく普通の音量に達しました。オシロを出力に当てて発振の有無を確認しましたが発振はありませんでした。
結局、ユニバーサル電源の整流直後のコンデンサを1800uF追加、更に外部コンデンサ端子に3600uFほど追加しハムを押さえる事ができました。

成功だったのか

後で、最大出力とダンピングを測ってみました。1KHzの正弦波の入力で、出力波形が歪み始める点で約3W、頭がつぶれ始める点で約5.4Wの出力が得られました。ダンピングは8Ωの負荷に対して約4でした。トランスの1次側のインピーダンスが約66Ωと非常に低いにも関わらず十分な出力を得る事ができました。
音は意外とすっきりしています。パラレル接続を使用すると音がボケるという事を聞きますがその様な感じはありません。今までの我が家のアンプと違い出力が十分大きい為余裕を感じさせる音となっています。問題は発熱の多さです。このシャーシに約100Wの電力がかかりますので天板は触れる限界の温度となります。ファンを使うなりの放熱対策を施す必要があるでしょう。夏場の使用は不可能かもしれません。

お勧めできません

この様な馬鹿げたアンプは省エネの観点からも作ってはいけないアンプです。特定の広い会場などで鳴らす為には良いかもしれませんが、私は決して奨めません。もっと簡単な方法があると思います。皆さんは決してマネをしないで下さいね。

以上です

2000年1月3日 田村
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