12HG7単段シングル無帰還アンプ

ダンピングは高い方が良い?ホント?

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単段なので単純な外観


きっかけ

 最近電流アンプの話題が多く出てきます。電流アンプと言う事は内部インピーダンスが非常に高く、理想的にはダンピングが0となります。現在ダンピングは高い方が良いという事になっていますから、電流アンプは全く正反対と言う事になります。アンプを作る人はダンピングを大きくする事に努力してきたわけです。ところが、手作りアンプの会の名誉会員の大沢さんの電流アンプを聞いてから、その常識は大きく覆されたのでした。しかし、不思議なのはダンピングが高いはずの超3や強NF等と共通の鳴り方をしている点です。音の立ち上がりの鋭さや陰影の深さなどはそっくりです。まるで、同じ形式のアンプかと思うぐらいです。そんな事があってから、ダンピングに関して高ければ良いと言う常識は揺らぎ始めたのでした。よく、多極管でアンプを作る際に音にならないとか、低域がボテボテになるとか、聞きますが本当でしょうか。実際に作って聞いているのでしょうか、それとも、憶測の話なのでしょうか。昔のラジオの出力段は大抵、無帰還シングルでした。その頃のラジオの音ですが一説によれば躍動感があって音楽性が高かったという事です。けっしてボテボテしていなかったとの事です。
 そんなある日、Gmが38mある球を見つけました。当初、強NFでもやりましょうと思っていましたが、この球を使って昔のラジオの音を検証しようと、電流アンプモドキを作る事にしました。どうせ作るなら実用にしたいと、トランスも珍しく奮発しT1200を2個積みの暴挙としました。

回路

 単段(簡単)なので回路不要と思いましたが、一応載せる事としました。この球、G2の電圧を150V程度に押さえる必要があります。中クラスのユニバーサル電源を使用し、130V系の電圧をそのままG2に使いました。G2用としては強力過ぎる電源です。理想的な電源で、理想的な5極管に最も近い球を無帰還で使用する事となりました。トランスも奮発していますので、かなりいい線でしょう。

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簡単な回路です。

この手のハイGm管は固定バイアスは危険ですのでセルフとしました。また、入力振幅が不足するだろうと、入力に1:2の小型トランスを入れています。また、電源のコンデンサを増強できるようにコンデンサ端子をシャーシ上に付けました。6AN8−8パラで使用したコンデンサを使用できます。シャーシはいつものタカチの1mm厚のぺらぺらシャーシを使用しています。
穴あけが終われば、回路の組み立ては30分ぐらいです。なにせ簡単な回路です。発振する事を恐れて配線は極力短くします。抵抗にリード線が残らないぐらい短くして配線しています。もちろん、アースはベタを使いました。

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外付けコンデンサとアンプ                  上箱のコンデンサBOX
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内部配線 何か寝てますが、解説は後で

試聴と改造

 最初の火入れは外付けコンデンサ無しで行いました。最初の音の印象は音が小さいという事でした。ゲインが低いようです。ボリュームを上げていくと・・・拍子抜け?なんだ、普通じゃないですか。低域のボテボテもありませんし、中高音も変な所はありません。只、ちょと低域不足でしょうか。気を取り直して、外付けのコンデンサBOXを接続してみました。内部抵抗が高いですから、電源の影響は小さいはずですが、変化が生じたました。低域が出てきたのです。外付けコンデンサの威力がはっきり解るのも不思議です。
 さて、ここからいろいろとCDを代えて音の出方を検証していきました。中高域は非常に解像度が高く細かい音まで良く出ています。特に高域は奇麗です。といっても、キツイ感じの音ではありません。また、低域の出方ですかボテボテした感じは全く無く、むしろ締った感じです。最初低域が無くなったと思ったのですが、低域の入っているCDではちゃんと出ます。無くなったのは余韻でした。現在の鳴りが正しいか否かは解りませんが、他のアンプで聞くと低域の余韻が続いているのが確認できますが、このアンプでは無くなってしまいます。以前単発正弦波の実験でどのアンプも何発か余計な音が発生していた事を思い出しました。もしかすると、このアンプの方が忠実なのかもしれません。
 このアンプ三土会とお寺のコンサートで皆に聞いてもらったのですが、「期待に反して普通の音」「何だまともじゃないか」との評でした。
 後日、自宅で聞いていてどうも高域が荒れると思いましたので、NLRを付ける事としました。NLR装着後はより一層普通の音となり普段聞くアンプの一つに納まりました。

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NLR付きの回路

 後日、大沢さんが本物の電流アンプを携えて我が家にいらして下さいました。平面SPとの相性は極めて良く今までで最も良くこのSPが鳴ったかもしれません。私の超3や強NFはすべて惨敗、唯一12HG7無帰還単段アンプが近い(程遠い?)鳴り方をしていました。

今後の事

 このアンプに関してはまだ入り口です。これから改造をいろいろと行って少しでも本物に近づけたいと考えています。例えば、江口さんのGGアンプを応用するとかアイディアはまだまだあります。今後少しづつですが、改造をしていこうかと考えています。

2000/09/23 田村
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