プラグイン方式 スポット発信器・バンド・エリミネート・フィルタの製作

早い話が歪み率計


人気の高い測定器に歪み率計があります。計測した歪みにどれ程の意味があるか分かりませんが、アンプの音質評価の基準のように歪み率は至る所でもてはやされています。構成自体は間申で自作でも作れそうです。

歪み率計

制作した歪み率計の外観

交流電圧計は既に作りましたので、発信器とバンド・エリミネート・フィルタがあれば立派な歪率計が出来上がります。 発信器の低歪み化は古典的?な手法で解決し、発信周波数とバンド・エリミネート・フイルタの周波数のー致は集合抵抗を使って解決する事としました使用した発信器はウィーンブリッジと呼ばれる回路です。この回路の問題は発信の振幅安定性で、使用するアンプのゲインを常に適正値に保たなければなりません。ゲインが小さくなると発信は止まり、発信したまま放っておくと

振幅がどんどん大きくなり上下の頭が欠けてきます。上下の頭が欠けると当然歪率は大きくなります。アンプのゲインを制御する手法としているいるな方法がありますが、最も簡単なタングステン電球を用いた制御とする事にしました。この方法は電球というちょっと古臭い素子を使うためか最近あまり使用されないようです。しかし、簡単な割りに良い結果が得られるため今回の製作にはぴったりです。

次に、発信周波数とバンド・エリミネート・フィルターの周波数を正確に一致させなければなりません。周波数のー致は抵抗とコンデンサの相対精度で決まります。抵抗値は集合抵抗を用いる事で十分な相対精度を保証できます。特に集合抵抗を使用すると温度特性が良くなります。問題はコンデンサなのですが、現在普通に入手できるコンデンサでは松下のフィルムコンデンサが安価で公証精度1%(実測では0.5%のばらつき)です。このコンデンサを用いれば1%ぐらいの精度を持つ歪み率計が作れそうです。バンド・エリミネート・フィルタの回路はツインT型と呼ばれる回路です。今回の回路ではQを上げるためアクティブ方式を採用し、更に出力信号のゲインを10倍にしました。

歪み率計 コンデンサなし

コンデンサモジュールを外したところ

最後に、周波数の切り替えですが、当初の計画では押しボタンスイッチで4点の周波数が選べる方式を考えました。しかし、適当なスイッチが見つからないためスイッチによる周波数切り替えをやめて、コンデンサだけをコネクタで取り替えるプラグイン方式としました。最終回路を図2に示します。

歪み率計回路図歪み率計  内部

周波数の切り替えスイッチが無いから簡単
コンデンサモジュール内部
コンデンサモジュールの内部

回路が何の問題なく組み上がったら、1か所だけ調整が必要です。発信回路の帰還抵抗(5009VR)を電球の特性に合わせて適正な値としなければなりません。オシロスコープで出力をモニターし、クリップが無ければ良いのですが、どこの家にもオシロスコープがあるとは限りません。心配は要りません。もともと歪率計ですから、自分自身の発信の歪みを白分で計測する事ができます。と言う事で、オシロスコープなしで調整を行ってみましょう。 図8に計測時の機器の接続を示します。すべての機器の接続が終了したら、プラグインのコンデンサ・モジュールを接続し電源を入れます。発信出力調整を最大、入力調整を最大にします。フィルター出力切り替えスイッチをCALに合わせます。交流電圧計のレンジを×1で電圧を計ります。電圧が出ていれば発信器は動いています。電圧が出ていないときは発信調整ボリュームを回し電圧が出る場所に合わせます。次に、フィルター出力切り替えをMEANSにします。この状態でフィルター出力が最小になるように発信調整を行います。電球を使っているために発信が安定するまで1秒程かかりますので、一度調整ボリュームをしたら、ちょっと待ってから電圧を確認しましよう。

では、この装置の精度を計測してみましょう。フィルター出力切り替えスイッチをCALに合わせ、フィルター入力を調整し1.00Vに合わせます。次にフィルター出力切り替えスイッチをMEANSにします。交流電圧計の人力レンジを*10としてIV以下の電圧を示せば歪みは1%以下です。製作した歪率計の歪みを計ったところ、0.13%を示しました。(TL072を使用すると0.29%)

歪み率計の使い方

製作した歪み率計を使って歪みを計ってみましょう。始めにフイルター出力リファレンスで電圧を計測します。次にフィルター出力計測で電圧を測定します。歪み率は次の式で計算します。

THD(歪み率)= MEANS/(CALXI0)(%)

尚、フィルター入力ボリュームを調整しリファレンス電圧を1Vとしたときは、計測電圧×0.1がそのまま歪み率になります。1%ぐらいまでなら問題なく計れます。

歪み率計テスト中

残留歪みの計測様子

後日談

作ってから早一年、まだコンデンサモジュールは1個です。どうも秋葉へ行っても優先順位が低い為か、買い忘れてしまいます。ホームページを作ったのをきっかけに、アンプのデータ取りが必要になり。これからモジュールを揃えなければなりません。使用しているコンデンサは安価ですが、数を揃えようとすると結構コストがかかります。又、計測は微調整が無いとは言え結構面倒です。近々スイッチドキャパシタを使用した無調整の歪み率計を作る計画です。

参考文献

トランジスタ技術:1994年2月 オーディオ用高調波歪み率計の設計と制作

以上