歴史
リニアライザはかつて高周波のリニアアンプに使用されていた回路です。現在文献を探していますが、未だ見つかっていません。本当は、低周波のアンプ用として考案されたようです。残念な事にウイリフムソンのNFの発表の後だったようで、実際にオーディオアンプに使用された事はないようです。ただ高周波の世界では結構ポピュラーだったと聞きました。
効果・動作
目的はデバイスの持っている2乗特性を軽減する事にあります。無帰還アンプの歪みの低減方法に前段で発生した2乗特性歪みを使用して出力段の歪みを打ち消す手法が使用されますが、原理的には同等の効果があります。
3極管の等価回路を比較的厳密に考えると、電圧制御理想電圧源の上に2極管(プレート部分)がついた回路になります。この回路に正弦波を入力すると、2極管により歪みが発生し、上が少し尖って、克つ下が少し膨らんだ形に変化します。
又、理想的な電源に抵抗付け、その後に2極管を接続し、DCをオフセットを付けた正弦波を入力します。すると、下が少し尖って、上が少し膨らんだ形に正弦波は変化します。
これを加算(接続)すると上下の2極管(プレート形状)が全く同じ物であれば歪みは発生しない事になります。
効果・その他
通常使用される歪みの打ち消しでは、前段で発生する歪みと、出力段で発生する歪みの形が完全に同じになる事はありません。リニアライザの使用では、2乗歪みはプレート形状と流れている電流量で決定する事から、増幅素子とリニアライザ素子のプレート形状が同じなら、完全な歪みの打ち消しができる事になります。
古典回路の電源の少ない時定数下では、整流管が発生している逆特性が歪みの低減に関係していたのは間違い無いようです。理由としては整流管を変えて音が変るのは正に整流管がリニアライザとして動作している事を裏付けていると考えられます。
ストッピング・ダイオードは造語です。上条さんが指摘されるように、シングルアンプではトランスの電源側端子電圧が電源電圧より、上がる事はありません。ただし、負荷が純抵抗の場合です。ところが実際のスピーカーは純抵抗ではありません。正確な等価回路を作る事もかなり難しいようです。(分布乗数回路のようになる?)実際にスイッチングレギュレーターの設計では電源の逆流を想定して力率を上げる工夫をします。実際に電源とトランス間にダイオードを入れ発生する交流波形を観察すると、ここに信号が現れます。又、どのようなシングルアンプでも聴感上の特性の変化が観察されます。リニアライザと区別するため、ファーストリカバリダイオードを使用した実験を行うと明らかに変化を聞き取る事ができると思います。変化の特徴は一致しており以下のような特徴を示します。
等です。ただ、なぜこのようになるのかは現在検討中です。
BMの会の会員が制作したアンプを比較すると、ストッピングダイオードが入っているアンプに関して、一様に進み位相を観察できます。この様なアンプの共通する特性は音が大きくなる事です。たとえば6BM8シングルアンプが発生する音量と同じ音量を、EL34のPPが出せないのです。(こんな過激で近所迷惑な実験はあまり推奨しません)そこで位相が進む事から、この様な特性の事を加速度ドライブと呼ぶことにしました。
たとえば、車の運転をする再にアクセルを踏むのは加速する場合です。速度が上がった後は、アクセルをゆるめても車は一定の速度で移動します。最も加速をする時にもっともアクセルを踏まなければなりません。(当たり前です)さて、スピーカーの振動版を加速する事を考えると同様に、最も加速する場所で最も電力を入力する必要があります。(ハードディスクのボイスコイルモーター等でもその様に駆動しています)ところが、入力と出力の位相が同じでは、正弦波の山の上、振動版が停止している位置で最も電力を供給している事になります。更に、ゼロクロスポイント、振動版が最も加速している点で出力が0になってしまいます。(出力電圧0で電力も0)
この考えで説明すると、音が大きいなどの特徴の説明ができます。
マイクロホンが拾う情報は現在ほぼ位置情報と考えて良いと思います。加速度情報の情報源はいくつか存在します。ダイナミックマイクはコイルと磁石を使用していますから多分加速度情報を含んだ出力を出すと思われます。又、レコードピックアップに関しても出力は加速度情報気味な情報を出力するはずです。レコードとCDの音質の違いはこの点にあると考えています。